歪められた食の常識

歪められた食の常識 ティム・スペクター 寺町朋子訳 白揚社 ISBN978-4-8269-0226-7 2,600円 2021年3月

 以前取り上げた「科学が暴く「食べてはいけない」の嘘」の類書。目次にあるように、食にまつわる様々な“定説”を取り上げて検証する。

 イギリスで遺伝学の教授、双子の研究者だそうだ。さらに、医療の問題や腸内細菌(役割を過大評価しすぎ?)にも興味を持っているようだ。

 繰り返し述べているのは、平均的な人間などいない、だからそれぞれの食物に対する反応も異なるということ。ヒトは食物を一種類だけ食べるのではなく、複数のものを食べているので、その相互関係もあるはずだ。また、動物実験の結果をそのままヒトに当てはめるのは無理があるし、かといってヒトを使った実験は行いにくい。なので、信頼できるデータは少ない。一昔前は定説であっても、それは常に覆される可能性がある。もう一つ考えなくてはならないのが、巨大食品メーカーが恣意的な実験を行い、その力で政府を動かし、またCMで消費をあおっているということだ。

 違和感があるのは、これは「科学が暴く…」でも同じだが、イギリスやアメリカの現在の食生活が抱える問題の第一は”肥満”という背景があり、まずそれを前提としていることだ。そこが日本とはまだ少し違うと思う。つまり、朝食でシリアルに様々なものをかけて食べるという一日の始まり、これは日本ではまだあまりなじみがないのではないか。

※ 欧米では刺身は妊婦とって忌諱すべき食品になっているという。寄生虫の問題らしい。

 つまり、筆者が強調しているように、平均的なヒトがいないように、平均的な食文化もないということだと思う。つまり、個々の判断が試されているということになる。つまり万人に共通なことなない。

 こんなことは当然筆者も十分承知、でもあえて最後の12のポイントを揚げている。まあ、常識的な線だと思う。

1.添加物を摂取せず、植物性食品を中心として、バラエティ豊かな食事をする。
2.食品高架を裏付ける科学的根拠に疑問を投げかけ、手っ取り早いたった一つの解決策なるものを信じない。
3.食品ラベルやマーケティングにだまされない。
4.手ベルものに関しては、自分が「平均的な人」出ないことを理解する。
5.食事のマンネリ化を避ける。多様な食品を食べ、自分に合う食品を探す。
6.食事のタイミングを変えたり食事を抜いたりして、自分に合う食事にタイミングを探す。
7.サプリメントではなく、本物の食品を摂取する。
8.原材料が10種以上入っている超加工食品を避ける。
9.腸内微生物の多様性を高めるための食品を食べる。
10.血糖値や血中脂質の値が急上昇する回数をひごろからへらす。
11.肉や魚の食べる量を減らす。それらの持続可能性を確かめる。
12.本物の食べ物の重要性について、自ら学んで、次の世代に教えていく。

※ 自分自身がこのような食事をしているわけではありません。当然ですが…。

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目次
はじめに 間違った定説はこうして生まれる
1 個人差
――定説 栄養ガイドラインや食事法はすべての人に適用できる
2 朝食は必要なのか
――定説 朝食は一日の食事のなかで最も重要な食事である
3 カロリーは足し合わせできない
――定説 カロリーとは、ある食品がどれだけ太りやすいかを示すものである
4 脂質をめぐる大論争
――定説 飽和脂肪酸は心疾患のおもな原因である
5 サプリメントの科学的根拠
――定説 ビタミンサプリメントを摂取すると、健康が改善して病気を予防できる
6 人工甘味料の甘くない話
――定説 シュガーフリーの食べ物や飲み物を摂れば安全に減量できる
7 ラベルに書かれていないこと
――定説 食品ラベルは健康的な食品選びの役に立つ
8 加工食品もいろいろ
――定説 加工食品はすべて健康に悪い
9 ベーコンよ、カムバック
――定説 肉はすべて健康に悪い
10 魚の実態
――定説 魚はすべて健康にいい
11 ビーガン教
――定説 ビーガン食は最も健康的な食事である
12 塩分恐怖症
――定説 誰でも塩分の摂取量を減らす必要がある
13 コーヒーは命の恩人かも
――定説 コーヒーは健康に悪い
14 赤ちゃんの分も食べる
――定説 妊娠中の食事のアドバイスは科学的根拠に基づいていて信頼できる
15 アレルギーの流行
――定説 ほとんどの人には何らかの食物アレルギーがある
16 グルテンフリー熱
――定説 グルテンは危険である
17 運動とダイエット
――定説 運動すれば痩せられる
18 食べ物と心
――定説 食品は体の健康にのみ影響し、心には影響しない
19 汚れた水ビジネス
――定説 水は一日にコップ八杯飲むべきだ
20 アルコールは飲んでもいい?
――定説 飲酒は健康に悪いと決まっている
21 フードマイレージ
――定説 地元産の食品がつねに最良である
22 野菜と農薬
――定説 農薬や除草剤は安全である
23 私を信頼しないで、私は医者なんです
――定説 医師は何でも知っている
結論 健康によい食生活とは
付録 食生活を改善する12のポイント
参考文献

2021年3月記

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