なごりの夢

なごりの夢 今泉みね述 金子光晴解説 ワイド東洋文庫9
ISBN4-256-80009-3 3,200円 2003年5月(デジタル版) 1963年12月初版

目次
はしがき 今泉源吉
維新前の洋学者たち
桂川家の人びと
なごりの夢
嵐のあと
関係人物略伝
解説「なごりの夢」について 金子光晴

 将軍御殿医の娘、昭和になって80歳を越えたみねの口述。将軍御殿医といっても蘭医なので比較的自由な家の雰囲気。また数少ない洋書の窓口として、後の維新前後に活躍する人たちも大勢出入りする家庭。母を幼いころになくしても、家族・親族さらにはこうした書生たちに大切に育てられ(一時は母方の祖父にも育てられる)、またおてんばでいたずら好き。でも幼少のころに染みついたお姫様くせ、あるいは徳川びいきは維新後も変わらない。尊皇の佐賀藩出身の夫とはその点では対立する。

 「江戸はあんまり太平に酔っていました。」とはみねの実感、でも時間に追われる若い人たち(当時)を哀れみ、江戸の風情を懐かしむ。これはいまの老人が若い人を哀れみ・若い時を懐かしむのと同じで少しおかしい。

将軍家御殿医の娘 平凡社新書

2008年7月記

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