ひげがあろうがなかろうが

ひががあろうがなかろうが 今江祥智 田島征三さし絵 解放出版社
IABN978-4-7592-5031-2 2,800円 2008年1月

目次
ひげがあろうがなかろうが
 1.櫛
 2.鉈
 3.笛
 4.兎
 5.夢
 6.水
 7.夜
 8.雨
 9.繭
 10.竹
 11.穴
 12.幻
 13.まぼろし
 14.あな
 15.たけ
 16.まゆ
 17.あめ
 18.まち
 19.みず
 20.ゆめ
 21.うさぎ
 22.ふえ
 23.なた
 24.くし
ひげのあるおやじたち
 一ばんめのとうちゃん・おまつり金次
 二ばんめのとうちゃん・むっつり右京
 三ばんめのとうちゃん・まじめ源庵
 四ばんめのとうちゃん・おとむらいの富
 五ばんめのとうちゃん・もらいやの又
 六ばんめのとうちゃん・女形の鶴蔵
 七ばんめのとうちゃん・おふざけ夢助
 八ばんめのとうちゃん・非人頭甚五
 九ばんめのとうちゃん・浪人五郎太
 十ばんめのとうちゃん・禅智和尚
 ひげのあるとうちゃんたち
 おしまいの話
あとがき ひとつの「いきさつ」
解説 二つの物語のために=中尾健次

 ひげのあるおやじたちでは「逃散」というかたちで権力者の鼻をあかしたが、37年ぶりのひげがあろうがなかろうがでは権力と正面から対決という局面にいたる(結果は書いてない)。

 ひげがあろうがなかろうがは、主人公の少年たけの成長物語である。城下町からは簡単に行けない、行くとしたら秘密の洞窟を抜けていくしかないところに隠れ住む父ちゃん、どうも忍者らしい街に住んでいる母ちゃん、父ちゃんにかくまわれるいろいろと怪しい人達。さらには川の民、海の民との交流。ネットワークを駆使した庶民と権力との最後の対峙という決定的な場面で(それまでの超人ぶりとはうらはらに)あっさり殺されてしまう父ちゃん。圧倒的武力に対しどう対抗するのか。彼ら親子が不思議な存在とみとめた師範代稲田兵馬はどうなるのか。

 章の題名が前半は漢字で、13章から反転して平仮名になる。ただ、7.夜と18.まちが対応していない。何か意味があるのだろうか。

 差別的表現があるということで、絶版になったひげのある親父たちについては、解説でどの部分が問題になったのかがわかる。中尾氏の説明に完全に納得しているわけではないが、難しい問題であることは確かだと思う。

 両編を併せて600ページを超える分厚い本だがあっという間に読める。

2008年4月記

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