幕末維新と佐賀藩

幕末維新と佐賀藩 毛利敏彦 中公新書
ISBN978-4-12-101958-5 760円 2008年7月

目次
まえがき
第1章 鍋島閑叟の登場
第2章 日本開国
第3章 尊皇攘夷と佐賀藩
第4章 江戸幕府崩壊
第5章 明治新政
第6章 国民教育への道
第7章 初代司法卿−人権の父
第8章 暗転 明治6年政変と佐賀戦争
終章 明治維新史を見直す
あとがき
参考文献
関連年表

 薩長土肥の一つ佐賀藩。でも、昔は鍋島騒動とかでしか知らなかった。他藩と比べると地味な感じ。幕末という絶好のタイミングに現れた開明君主閑叟かんそうと、彼に見いだされた江藤新平に焦点を当て、そこから明治維新を検証する。もともと長崎警備を担当させられていた佐賀藩、それは開明的な雰囲気を産むが同時に経済的な負担も大きく、閑叟が藩主になることには疲弊しきっていた藩を、トップダウンで改革し、経済的にも技術的(最初の鉄製大砲を自力でつくるまで)にも先進的な藩となる。園か旧藩士江藤新平は、最初は紆余曲折あるものも閑叟の懐刀となる。明治維新直前までは政治的立場は微妙に揺らぎながらも、維新から直後の活躍で薩長土肥の一つとなる。その過程で新平も政権の中枢に入る。いわば遠い先をも見通せる有能官僚として、財政、さらには教育(現在の教育制度の基礎をつくる)、民権(民法)、そして三権分立も視野にという矢先に、中央政界の争いに敗れ(いわゆる征韓論のごたごた)、下野したときに地元の志士に祭り上げられ、中央政府と対峙するも破れ、逃げる途中で捕まり即刻処刑(斬首)となった。

 この本では佐賀藩、とりわけ閑叟と江藤新平に力点を置いているので、大久保利通はいかにも俗物、単なる嫉妬で江藤新平を死に追いやっていることになってしまうが、利通側から見るとどうなんだろう。

2008年9月記

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