グアムと日本人

グアムと日本人 戦争を埋め立てた楽園 山口誠 岩波新書新赤1083
ISBN978-4-00-431083-9 740円 2007年7月 

目次
はじめに 忘れたことさえ忘れる前に
グアムの位置と地理
第1章 「大宮島」の時代
第2章 基地の島と観光の島
第3章 楽園の建設、記憶の埋め立て
第4章 値札と忘却
第5章 見えない島
あとがき
もう一つのグアム・ガイド

 旧日本軍が唯一アメリカから奪った人が住んでいる領土。もともと住んでいたチャモロ人たちにとっては、スペイン支配以後の支配層が変わっただけということかもしれない。しかし、アメリカが再占領(再奪取)するときの激戦、それに伴う混乱で多くのチャモロ人も犠牲になっている(日本兵が虐殺した人たちもいる)。

 なんといっても私の年代では、1972年「恥ずかしながら帰ってきました。」の横井庄一氏が印象に深い(戦後28年間潜んでいた)。そして、この本を読んで記憶が蘇ってきたのは、その12年前の皆川氏、伊藤氏であった。

 この本を読んでさらに知ったのは、日本が占領したときに逃げたアメリカのトウィード通信兵がいて、彼は残留日本兵と違って地元の人の支援を受けて生き延び、アメリカ軍再上陸の11日前に救出されていたということである(アメリカ再上陸の9日前にはトウィード通信兵をかくまった嫌疑で神父とその甥が日本兵に斬首されている)。

 訪れる観光客のほとんどが日本人、その内容は、最初は新婚旅行の地、その後は若者の島、そして現在の家族旅行の島と変遷しているという。そして、彼らの旅行のほとんどがタモン湾付近の観光施設で完結しているという。

 肝心のチャモロ人は観光産業では潤わず、どんどん島外に出て、現在増えている住民はフィリピンからの移民が多いという。

 何となくグアムは敬遠していたが、この本の巻末のガイドを頼りに一度行ってもいいかなという気になってきた。

2007年7月記

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