水俣学講義

水俣学講義 原田正純編著 日本評論社
ISBN4-535-58384-6 2,700円 2004年3月

目次
講義録の出版にあたって 執筆者紹介 原田正純
第1回 水俣学の開講 −まえおきにかえて 原田正純・花田昌宣
第2回 水俣病の歴史 原田正純
第3回 チッソの企業体質と技術 −企業史 宇井純
第4回 チッソ労働者と水俣病 −公害病と職業病の関係 山下善寛
第5回 水俣病を記録して −1960〜1997年 桑原史成
第6回 水俣病とマスコミ −主に地元紙の視点から 高峰武
第7回 法創造に挑む水俣病裁判 富樫貞夫
第8回 水俣病患者の闘い −企業と差別 宮澤信雄
第9回 海の生き物たち −豊かな自然の原風景 佐藤正典
第10回 被害者の想い −闘いの日々 濱元二徳
第11回 世界の水銀汚染と水俣病 原田正純
第12回 被害補填の経済学 花田昌宣・酒巻政章
第13回 水俣学まとめ −教訓をよりたしかなものに 原田正純
水俣病年表

 熊本学園大学2002年後期に行われた水俣学の講義録である。講師陣は原田氏を始め、70年代に反公害運動を引っぱった宇井純氏、チッソの第一組合委員長だった山下善寛氏、水俣の写真でデビューした桑原史成氏、地元熊本日日新聞で長く水俣病を追ってきた高峰武氏、法の面から裁判を支援した富樫貞夫氏、エリートの道を捨て水俣病を追っているもとNHKアナウンサーの宮澤信雄氏、ゴカイを研究している佐藤正典氏、被害者の濱元二徳氏、経済学の花田昌宣・酒巻政章氏という豪華講師陣。

 講師陣からもわかるように、さまざまな角度から水俣病に迫る。講義録であるのでわかりやすいし、単元ごとにある程度完結しているので読みやすい。

 そして皆が強調していることは、「水俣病は終わっていない」ということである。実際世界でも繰り返し似たような被害者が出ている。もちろん、それぞれの程度は違うし、無機水銀の中毒もある。だが、行政の無責任は日本ばかりではないようだ。残念なことにこれは世界に共通している。そして原田氏が悔やんでならないのことは、「水俣病認定の基準」が典型な重症患者の症状に準拠しているということである。政府間の問い合わせには、原田氏は出してもらえない。そうした悔しさも伝わってくる。

 もう一つ、患者に対する補償は建前上はチッソが行うことになっているわけだが、実際は県を通じた国が行っていることも明らかにする。

2004年4月記

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