環境リスク学

環境リスク学 不安の海の羅針盤 中西準子 日本評論社
ISBN4-535-58409-5 2002年9月 1,890円

目次
1部 環境リスク学の航跡
 1章 最終講義「ファクトにこだわり続けた輩がたどり着いたリスク論」
 2章 リスク評価を考える Q&Aをとおして
2部
 3章 環境ホルモン問題を斬る
 4章 BSE(狂牛病)と全頭検査
 5章 意外な環境リスク
あとがき
索引

 現代社会に生きる以上、リスクは0にできない。では、どうやればリスクを最小にできるか、筆者はこの問題に真っ正面から取り組んできた。つまり、Aというリスクを小さくするとBというリスクが大きくなる場合、あるいはリスクを避けるためのコストの問題、これらを総合的に考えなくてはならないということである。

 筆者の研究は下水処理から出発して、「濃度規制」に対し「総量規制」という概念を打ち立てる。さらに、ダイオキシンについてはゴミ焼却炉よりも、残留農薬の影響の方が大きいことも、農家の倉庫に残っていた1970年代の農薬を発見して実証する。

 ファクトにこだわっているので、全体として説得力がある。ただ、リスク論は為政者によって恣意的に利用される可能性もある。つまり質のよいデータを市民側で獲得できない場合(為政者が意図的にデータを隠蔽している、改ざんしている、都合のいいところしか出さないなど)、それでも市民の側はそれに対抗できるようにならない。

 なお、筆者の中西準子氏の父は、終戦後間もないころの共産党の幹部中西功氏である。彼は戦前は満鉄につとめ、戦中に逮捕・拘束され、戦後の共産党では「50年問題」で党中央から批判されることになる。こうした父の生き方が彼女の生き方に大きな影響を与えたように思える。

 中西氏のホームページも参照。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/

2004年12月記

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