麻布の少年

麻布の少年 暗闇坂瞬 明窓出版
ISBN4-89634-118-X 1,500円 平成15年5月

目次
一章 麻布山(あざぶさん)
二章 貴顕の街
三章 慄(おのの)く春
四章 池畔(ちはん)にて
五章 掘田屋敷
六章 下山
七章 麻布材木町
八章 蝉時雨(せみしぐれ)
九章 夕映え(ゆうばえ)
十章 淵瀬(ふちせ)絶えなく
十一章 それぞれの想念
十二章 手向(たむ)けの花
十三章 木枯(こが)らし

あらすじ
 山脇文太は昭和35年に生まれた。育ったのは麻布である。父・為七は大工だが、酒におぼれていた。母は知らない。小学校は公立だが、華族の子供も多い。だんだん自分か孤独な身だと知っていく。

 父は卒中で倒れる。文太もいじめに遭い、ガマ池に落とされ怪我をする。いじめの首謀者ガキ大将堀田精種(きよたね)の家に連れて行かれる。文太父子の大家のおかみのチエが、大金持ちの堀田家から半ばお金を脅し取る。堀田はなぜか、文太をかばうようになる。

 働けなくなった為七は麻布から渋谷豊沢に引っ越さなくてはならなくなる。途中棟梁(社長)のところにあいさつに行く。社長の妻・千頭子は文太の母を知っているようであった。

 新しい学校の担任の下で、文太は平穏な日々を送る。ある日、孤児達のホームから通う文江と知り合いになる。淡い恋。だが文江の暮らすホームの人間関係はそれなりに大変であった。文江にクリスマスに招かれたが、それが一部孤児達の不満を買い、文太は黙って引き下がる。

 文太の父はオリンピックの年、文太が中2の秋に死んだ。慶応の附属中学に通うようになった堀田は法外な香典を持ってきてくれた。チエもかつて堀田家から貰った金額を持ってきてくれた。文太は父と住んだアパートでの一人暮らしを始める。

 呆然とした冬を送る文太は、新しく開通した地下鉄の広尾駅で立ちつくす毎日を送る。不審な行動は一時は公安に目をつけられたが、通報を受けた渋谷署の佐藤という刑事に優しくしてもらう。文太は14歳であった。

感想
 長編になりそうな少年小説。一応舞台と登場人物が揃ったいうところか。高度経済成長直前の雰囲気。

2003年10月記

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