地殻ダイナミクスと地震発生

地殻ダイナミクスと地震発生 菊池正幸編 朝倉書店
4,000円 2002年11月 ISBN4-254-16726-1

0 地震とは何か 菊池正幸
1 地震はどこで発生するか 平田直
2 大地震は繰り返す 島崎邦彦
3 地殻は変動する 加藤照之
4 地殻を診断する 東原紘道・新谷昌人
5 地球の鼓動を探る 森田裕一
6 地球の変形を測る 大久保修平
7 実験室で震源を探る 吉田真吾
8 地震波で震源を探る 菊池正幸
9 強い揺れの生成メカニズム 宮武隆
10 地震発生の複雑さの理解 山下輝夫

 これも、東大地震研創立75周年の記念企画として企画された本(地球科学の新展開)の一冊である。もう二冊の地球ダイナミクスとトモグラフィーマグマダイナミクスと火山噴火参照。

 手元に「日本の地震学の概観」(地震 第2輯 第20巻 記念特集号、昭和42年(1967年)、地震学会)がある。ようやく地震とは何かが(断層運動である)確定した少し後の本である。当時の地震学の最前線が書かれていて、熱気が感じられる。この本の執筆者(56人)は当時地震学の最前線にいた人たちだと思うが、当たり前ながら35年後の「地殻ダイナミクスと地震発生」に再登場している人はいない。

 この35年間では、まず観測技術が大きく進歩したことがわかる。そして、断層運動の過程もより緻密にわかってきた。大地震の繰り返しの様子も明らかになってきた。ただやはり、地震発生の予測については慎重である。

 おもしろかったのは第8章<地震波で震源を探る>で、35年前の二人のスター、安芸敬一のバリア(弱い部分の破壊)と、金森博雄のアスペリティ(強い部分の破壊)の考え方の違いの意味がわかってきたということである。現在は、地震時に大きく滑る領域をアスペリティといい、破壊フロントの伝播がスムーズにいかない場所をバリアと呼ぶようになったということである。

 当初の目的、「一般の読書にもわかるように」ということをあきらめて、大学院の教科書レベルになってしまったので、内容はかなり難しい。

2002年12月記
2003年3月追記

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