MEG(メグ)

MEG(メグ)

スティーブン・オルテン 篠原慎訳 角川書店
1,900円 1997年7月  ISBN:4-04-791276-X

 メグとは2500万年前〜400万年前の暖海に生息していた巨大サメ(カルカロドン・メガロドン)である。体長は13m、場合によっては20mにもなったという。その歯の縁はナイフのように鋭い。カルカロドンはギザギザの歯、メガロドンは大きな歯の意味である。人食い鮫ともなるホオジロザメの祖先だともいう。

 この本は、そのメグが現代でも生き残っていたというフィクションである。実際にごく最近まで生き残っていた、いや現代でも目撃した人もいるという話しもある。

 ストーリーは類型的だ。メグを巡り、本当は優秀な主人公が挫折して、でも復活するという話しである。取り巻く人物も、男を自分がステップアップするための道具にしか思わない妻、主人公に憧れる若い娘、主人公と同じように世をすねている親友など。主人公にあこがれを持つ娘やその父親は日系人タナカというところが味噌かもしれない。この父親は人工のラグーンをクジラの楽園にしたいという若いころからの夢を、まさに実現しようとしているところだった。そして、主人公に敵意を持つ人たち…

 このプロジェクトの資金の出所は日本の海洋科学技術センターで(バブルのころでもそんなに資金の余裕はなかったと思う、しかも柔軟に支出するなんて日本では考えられない)、マリアナ海溝に設置する地震計の技術を買ったのだが、なぜかその地震計が破壊されてしまう。この調査に主人公が潜水艇操縦技術を買われて、タナカと協力するのだ。かつてメグのために潜水艇で事故を起こし、仲間二人を死なせてしまったことが彼を屈折させていた。

 その後、メグの研究家として過ごしていたが、タナカの誘いに乗って再び潜水艇に乗ることにしたのだ。メグは本当に存在していて、主人公の前に現れるだろうか。

 という具合に話は進む。じつは、たまたまNHK・FMでドラマとして放送されたものをちょっと聞いて興味を持った。ちょうど潜水する場面で、チューブワームとか、シロウリガイが出てきたからだ。

 話しは荒唐無稽で、メグも恐竜が繁栄した中生代の生き残りということになっているし、暖海にすんでいたメグが0℃近い日も差さぬ深海で暮らせるのは、熱水の噴出で海溝の深みに暖水があるということになっている。そして、そのメグが仲間の流す血液の熱に守られて浅い海に浮上する。そして、この30mクラスのメグはクジラなどを殺戮するばかりか、なんと原子力潜水艦(初代ノーチラスが現役復帰してメグを追う)までも破壊する力を持っている。

 期待した深海の様子の描写は、ごくわずかしかなかった。期待せずに、暇つぶしに読む本だと思う。

※ チューブワームなど不思議な生物は 
     http://pubs.usgs.gov/publications/text/exploring.html
     参照。

 

2002年9月記

戻る  home